認知症予防の「FINGER研究」とは?|食事・運動・頭・健康管理を組み合わせる、自分らしく暮らすための4つの習慣
健康・からだ

認知症予防の「FINGER研究」とは?

2026-10-30読了目安 約8分

これから先も、できるだけ長く、自分らしく暮らしたい。 好きな場所に出かけ、家族や友人と話し、自分のことは自分で決めたい。

そう願うとき、気になることのひとつが認知症ではないでしょうか。 年齢を重ねるほど、誰にとっても身近になる病気です。

認知症については、生活習慣に働きかけることで、 認知機能の低下を防いだり、遅らせたりできる可能性が研究で示されています。 その代表的な研究が、フィンランドで行われた FINGER(フィンガー)研究 です。

この記事では、FINGER研究と日本版の研究でわかったこと、 そして今日から取り入れられる4つの習慣を紹介します。

注意 この記事は研究の紹介であり、医療的な助言ではありません。持病のある方や薬を飲んでいる方は、生活習慣を大きく変える前に、かかりつけの医師に相談してください。

1. FINGER研究とは

FINGER研究は、フィンランドで行われた、認知症予防の大規模な研究です。 2015年に医学誌「ランセット」に結果が発表されました。

対象60〜77歳の 1,260 人。認知症のリスクがやや高く、認知機能が同年代の平均かやや低めの人
期間2年間
比べた方法4つの取り組みを組み合わせたグループと、一般的な健康アドバイスだけを受けたグループに分けて比較

組み合わせた4つの取り組みは、次のとおりです。

食事北欧の栄養推奨に基づいた、バランスのよい食事の指導
運動有酸素運動、筋力トレーニング、バランス訓練
頭のトレーニング記憶や処理の速さなどを鍛えるオンラインのプログラム
健康管理血圧、コレステロール、血糖、体重などの定期的なチェック

また、グループでの活動を通じて、人と交流する機会も設けられていました。

ポイントは、どれか一つではなく、いくつもの取り組みを同時に組み合わせたことです。

2. どんな結果だったのか

2年後、認知機能の総合的な点数は、どちらのグループも改善 していました。 そのうえで、4つを組み合わせたグループのほうが改善の幅が大きく、その差は統計的に意味のあるものでした。

研究チームの説明によると、改善の幅は比べたグループに対して、

  • 認知機能の総合点で 25% 大きい
  • 段取りや判断などの「実行機能」で 83% 大きい
  • 「処理の速さ」で 150% 大きい

という結果でした。

注意 これは「改善の幅」どうしを比べた数字で、認知機能そのものが2倍以上になったという意味ではありません。2年間の総合点の変化は、組み合わせたグループが 0.20、比べたグループが 0.16(標準化した点数)で、差そのものは小さなものです。それでも、生活習慣の組み合わせで認知機能の低下を防げる可能性を、大規模な比較試験で示したことが注目されました。

一方で、取り組んだグループでは、何らかの有害事象があった人が 7%(比べたグループは 1%)で、最も多かったのは筋肉や関節の痛みでした(5%、比べたグループは 0 人)。 新しく運動を始めるときは、無理のない範囲から少しずつ、が大切です。

3. 世界に広がる研究

FINGER研究をきっかけに、世界各地で同じような研究が始まりました。 2017年には、各国の研究をつなぐ 「World-Wide FINGERS」 というネットワークがつくられ、 2026年9月の時点で、74か国の研究チームが参加しています。

4. 日本では? ── J-MINT研究

日本でも、国立長寿医療研究センターなどが J-MINT研究 を行いました。

対象軽度認知障害(MCI)のある 65〜85歳の 531 人
期間18か月
取り組み生活習慣病の管理、週1回の運動教室、栄養相談、タブレットを使った認知トレーニング

結果は、少し複雑です。

  • 参加者全体で見ると、主な評価項目では、比べたグループとの間に はっきりした差は出ませんでした
  • ただし、追加の分析では、運動教室に 7割以上参加した人 で、認知機能の改善が見られました
  • また、2025年に発表された追加の分析では、血圧・血糖・脂質のコントロールが十分でない人 で、認知機能の低下を防ぐ効果がより大きい可能性が示されました

「続けた人で効果が見られた」「血圧や血糖などの管理が十分でない人で効果が大きい可能性がある」。 この結果は、取り組みを続けることと、健康診断の数字を放っておかないことの大切さを示しているように思えます。

研究の成果をもとに、2025年には地域の教室で行う「地域版J-MINTプログラム」がつくられ、普及に向けた取り組みが始まっています。その効果を確かめる研究は、2026〜2027年度に行われる予定とされています。

5. 今日から取り入れられる4つの習慣

研究と同じ内容をそのまま家庭で再現するのは難しくても、考え方は日々の暮らしに取り入れられます。

なお、ここで挙げる習慣を自宅でそれぞれ行った場合の効果は、これらの研究で確かめられたものではありません。

1. バランスよく食べる

特別な食事法でなくても構いません。 野菜や魚、穀物などを偏りなく食べることを意識するところから始めてみましょう。

2. からだを動かす

ウォーキングのような有酸素運動に、筋力トレーニングやバランスの運動を組み合わせるのが、研究で取り入れられていた方法です。 J-MINT研究の追加の分析では、運動教室によく参加した人(7割以上)で効果が見られました。一度にたくさんより、続けられることが大切です。

3. 頭を使い、人と会う

新しいことを覚える、手順を考えながら何かを作る、といった頭を使う活動に加えて、 人と会って話すことも、FINGER研究の取り組みの一部でした。 趣味の集まりや地域の活動など、楽しみながら続けられる場があると理想的です。

4. 健康診断の数字を放っておかない

血圧、血糖、コレステロール、体重。 J-MINT研究の追加の分析では、これらのコントロールが十分でない人で、取り組みの効果が大きい傾向が見られました。 健康診断の結果を見返し、気になる数字があれば、医師に相談してみましょう。

参考 国立長寿医療研究センターは、軽度認知障害(MCI)の人やその家族に向けた 「あたまとからだを元気にするMCIハンドブック(第2版)」を公開していて、ホームページから見ることができます。

6. Lifulo からの視点:予防と一緒に、「もしものときの希望」も

予防に取り組むことは、自分らしく暮らせる時間を延ばすための、前向きな一歩です。

ただ、どれだけ気をつけていても、病気を完全に避けられるわけではありません。 そして、認知症になったとしても、その人らしさや大切にしてきたことがなくなるわけではありません。

だからこそ、元気なうちに 「もし認知症になったら、どうしてほしいか」 を言葉にしておくことにも意味があります。 本人の希望がわかっていれば、家族は迷ったときに、その言葉を手がかりにできます。

Lifulo のアプリでは、「もしもの時の希望」のテーマに次のような書くヒントを用意しています。

  • 認知症になったとき、家族にお願いしたいこと
  • 認知症になっても、これだけは尊重してほしいこと

予防の習慣と、もしものときの希望。 その両方を持っておくことが、これから先を安心して過ごすための備えになるのかもしれません。

7. まとめ

  • FINGER研究は、食事・運動・頭のトレーニング・健康管理の4つを組み合わせることで、認知機能の低下を防ぐ可能性を示した
  • 両グループとも改善したうえで、4つを組み合わせたグループのほうが改善の幅が大きかった
  • 日本版のJ-MINT研究では、全体でははっきりした差は出なかったものの、追加の分析では運動教室によく参加した人や、血圧・血糖・脂質の管理が十分でない人で効果が見られた
  • 今日からできるのは「バランスよく食べる」「からだを動かす」「頭を使い、人と会う」「健康診断の数字を放っておかない」
  • 予防と一緒に、もしものときの希望も書いておくと、家族の手がかりになる

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