メキシコ「死者の日」と映画『リメンバー・ミー』|"忘れない"ことで、大切な人とつながり続ける
世界の死生観

メキシコ「死者の日」と映画『リメンバー・ミー』

2026-10-16読了目安 約6分

10月31日のハロウィンと重なるころ、メキシコでは別のお祭りが始まります。 「死者の日(Día de Muertos)」です。

家々や墓地に、オレンジ色のマリーゴールドで埋めつくされた祭壇が作られ、 亡くなった家族の写真や、生前に好きだった食べ物が並べられます。 死者を悼むというより、帰ってくる家族を迎える、にぎやかな行事です。

この風習を舞台にしたのが、ディズニー/ピクサーの映画 『リメンバー・ミー』 です。 日本では2018年3月16日に公開され、第90回アカデミー賞で長編アニメーション賞と主題歌賞を受賞しました。

この記事では、死者の日とはどんな行事なのか、 映画が描いた「忘れられた時に本当に消えてしまう」という考え方、 そして日本のお盆との共通点を見ていきます。

1. 「死者の日」とは

死者の日は、亡くなった家族や親しい人が、ひととき地上に帰ってくるのを迎える行事です。 2008年には、ユネスコの無形文化遺産に「死者に捧げる先住民の祭礼」として登録されています(2003年に宣言)。

ユネスコの説明によると、この行事は先スペイン期の宗教儀礼と、16世紀に伝わったカトリックの祝祭が融合したものです。 毎年10月末から11月初めにかけて行われます。

メキシコ政府の解説では、日にちごとに迎える相手が決まっています。

11月1日亡くなった子どもたちを迎える日
11月2日亡くなった大人たちを迎える日

2. 祭壇「オフレンダ」に込められた意味

死者の日のいちばんの見どころは、家族が手作りする祭壇 「オフレンダ(ofrenda)」 です。 メキシコ政府の解説では、並べるものの一つひとつに意味があるとされています。

マリーゴールド(センパスチル)鮮やかなオレンジ色の花。色と香りで、故人を祭壇まで導く
ろうそく故人の魂が戻ってくる道を照らす
水長い旅をしてきた故人の、のどの渇きをいやす
死者のパン(パン・デ・ムエルト)骨をかたどった飾りをのせた、オレンジの香りのパン
写真祭壇の中心に飾られ、故人がそこにいることを示す
切り絵の旗(パペル・ピカド)花やガイコツの模様を切り抜いた、色とりどりの紙飾り
ガイコツの飾り砂糖菓子などで作られ、死をユーモアとともに受け入れる気持ちを表す
故人の好物生前に好きだった食べ物や飲み物

写真を中心に、好きだった食べ物を並べて「おかえり」と迎える。 祭壇そのものが、その人がどんな人だったかを家族で思い出す場になっています。

3. 『リメンバー・ミー』が描いた、もう一つの死

映画『リメンバー・ミー』の主人公は、音楽を禁じられた一家に生まれ、ミュージシャンを夢見る少年ミゲルです。 死者の日の夜、ミゲルは先祖たちが暮らす 「死者の国」 に迷い込んでしまいます。

この映画には、印象的な設定があります。 死者の国にいる人は、生きている家族に忘れられると、死者の国からも存在が消えてしまうのです。

肉体の死のあとに、「誰からも思い出されなくなる」という、もう一つの死がある。 だからこそ、死者の日に写真を飾り、名前を呼び、思い出を語ることには意味がある—— 映画は、死者の日の風習をそんなふうに描いています。

覚えていてくれる人がいる限り、その人はどこかで生き続けている。 大切な人を見送った経験のある方には、どこか身に覚えのある感覚かもしれません。

4. 日本のお盆との共通点

亡くなった家族が帰ってくるのを迎える—— この感覚は、日本のお盆によく似ています。 ディズニープラスの公式サイトでも、死者の日のように先祖を想う習慣は「日本のお盆に通じる文化」と紹介されています。

メキシコの死者の日日本のお盆
時期10月末〜11月2日ごろ7月または8月の13日〜15日(16日)ごろ(地域による)
迎える目印マリーゴールドの色と香り、ろうそくの灯り迎え火の炎と煙
迎える場所祭壇(オフレンダ)精霊棚(盆棚)

浄土宗の解説では、お盆の迎え火について「立ち上る煙に乗り、炎を目印にして、ご先祖さまがいらっしゃる」と説明されています。 花の香りで道を示すメキシコと、炎と煙を目印にする日本。 遠く離れた国で、「帰ってくる家族が迷わないように」という同じ思いが形になっているのは、興味深いところです。

違いがあるとすれば、その雰囲気かもしれません。 死者の日は、色鮮やかな飾りと音楽のなかで、死をユーモアとともに受け入れる祝祭として続いています。 お盆のしつらえや過ごし方も、地域や家庭によってさまざまです。 どちらが正しいということではなく、亡き人との向き合い方には、いろいろなかたちがあるのだと気づかされます。

5. 「覚えておいてもらう」ために、思い出を書き残す

『リメンバー・ミー』の設定を借りるなら、 大切な人が「生き続ける」ためには、その人を覚えている誰かが必要です。

けれど、記憶は少しずつ薄れていきます。 声や口ぐせ、好きだった食べ物、一緒に笑った日のこと。 いつでも思い出せると思っていたことほど、細かいところから消えていきます。

だからこそ、思い出を 言葉にして残しておく ことには意味があります。 オフレンダに写真や好物を並べるように、その人らしさを形にしておくイメージです。

たとえば、こんなことから書き始めてみてはいかがでしょうか。

  • 亡くなった人と過ごした、忘れたくない時間
  • 一枚だけ選ぶなら、この写真というエピソード
  • 音楽と一緒に蘇る場面

Lifulo のアプリでは、「思い出」のテーマにこれらの書くヒントを用意しています。

そしてもう一つ。 いつか自分が「思い出される側」になったとき、家族は何を手がかりに自分を思い出すでしょうか。 自分自身の思い出を書き残しておくことは、未来の家族にとっての、小さなオフレンダになるのかもしれません。

6. まとめ

  • メキシコの「死者の日」は、亡くなった家族が帰ってくるのを迎える行事。11月1日は子ども、2日は大人を迎える
  • 2008年にユネスコの無形文化遺産に登録。先住民の儀礼とカトリックの祝祭が融合している
  • 祭壇「オフレンダ」には、マリーゴールド、ろうそく、写真、故人の好物などを供える
  • 映画『リメンバー・ミー』は、「家族に忘れられると、死者の国からも消えてしまう」という設定で、覚えていることの大切さを描いた
  • 帰ってくる家族を迎えるという点で、日本のお盆とも通じる
  • 大切な人の思い出も、自分自身の思い出も、言葉にして残しておくことで、次の世代に手渡すことができる

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